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[コメント] インビクタス 負けざる者たち(2009/米)

マンデラの政治的手腕には感服させられる。彼がヒトラーとは逆に、単一民族ではなく国民を一体化させるためにスポーツを利用したその聡明さが知れる。但しその事実と彼の言葉のみが「いい話」として理解されるだけであって、感動には残念ながら繋がらない。「漢」クリント・イーストウッドのパッションの限界か。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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イーストウッドの男性的過ぎる思考が、止め処なくほとばしる作品である。

100の言葉を尽くすより、本能の支配する肉体のムーブメントをして語らしめ、国を動かしてゆく漢の物語がこれである。実際ここから伝わるのは、言ってしまえばネルソン・マンデラの「男気」であり、イデオロギーではない。

それゆえにこの年、南アのラグビーチームは優勝できたのだから結果オーライなのだが、そこから紡ぎだされる結論は「南ア万歳、マンデラ万歳」という素朴なエールであり、こうしたセンチメンタルな美談はあまり大規模な国家単位で語られて欲しくはない。イーストウッドが浪花節男であることは既に知れたことではあるし、ついつい語り過ぎてしまうのは仕様のないことであるにしてもだ。

「私は我が運命の支配者、我が魂の指揮官だ」美しい言葉である。それだけにやはり冷静さを失って賛美に身を捧げるのはちょっと待って欲しい。マンデラも人間の子であり、誤謬を犯す可能性を持つ人間であるからだ。彼が現代世界史の教科書に載っているだけの人物になるまで、英雄として語るのはやめておくべきだろう、と思えてならないのだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)NOM りかちゅ[*] けにろん[*] たいへい のこのこ

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