[コメント] インビクタス 負けざる者たち(2009/米)
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口数少なく、文字通り身体を張ってチームを率いる主将を演じたマット・デイモンもよかったが、マンデラ大統領の描き方は出色で、それに応える演技を見せたモーガン・フリーマンは流石の一言。
とりわけその娘とのシーン。あれだけみんなには穏やかに諭すように、説得力をもって「赦し」を説いたマンデラが、主将の写真を「警官みたい」と言った娘にはいきなり「(お前のしていることは)理解ではなく批判だ」と手厳しい。
「これでは娘とは上手くいかんわなあ」と、本人も言ってしまってから気がつく。それでもつい言ってしまったのは、「せめて家族くらいは、このくらいのことはわかってほしい」というごくごく普通の「甘え」があるからだろう。そういうシーンを入れることによって、ネルソン・マンデラを「伝説の偉人」ではなく普通の人間として引き寄せている。そういう演出をさらっと自然にこなせるところがえらい。
他にも決勝戦の試合中継のラジオに近づく黒人の少年など、「いかにも、いかにも」というシーンも少なくないが、そういうものとして鼻につかせることなしに、さらりとできるというのは実は凄いことではないだろうか。
本作には、オバマ大統領が誕生したアメリカ社会へのメッセージ云々など、いかようにも深読みできる要素がある。だが、そういうものをあまり気にしなくても、ごく普通の、ちょっぴり感動的な娯楽映画としても大いに楽しめる。
それを可能にしたのは、クリント・イーストウッド監督と役者たちの、相当な力量ということだろう。見てよかったといえる一本だった。
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