[コメント] 八月の濡れた砂(1971/日)
思えばこの当時1970年代の初期というのは、日本そのものが思春期を迎えた時だったのかも知れません。時代と作家性が見事に組み合わさって生み出された奇跡のような作品。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作を観てストーリー云々を言うのは野暮というものだろう。物語はあるようで無いような。突発的に喧嘩して、後はグダグダしているだけの物語と言ってしまえばそれで終わりである。
だが、ここには間違いなく“生”が込められている。ここで描かれる青春群像はあまりにも生々しくリアルだ。
思春期を迎え、大人達の小狡さや、人生の行き先を考えるに至ると、何もかも無意味に思えてしまい、強烈な破壊衝動と無気力が同時に入り込んでくる。妙な焦燥感はあるのだが、何もすることを思いつかない。何かをしなければならない。何かを見つけねばならない。だけど見つからない。その反復に揺れる時期があるもの。
この作品はそんな心を切り取って出されたようなもの。勿論こんな暴力的ではないし、浮いた話ももっとこそこそやっていたものだが、確かにここに描かれる心情は私も確かに持っていたのだ。それを突きつけられたようで、今観るとちょっとした心の痛みと苦笑いが出てしまう…あの当時もっと弾けていれば良かったという後悔もちらほら。
ここに登場する役者達も全員素人臭いため、それが逆にリアリティを増していた感じもする。
好きか嫌いかが極端に別れる作品だとは思うが、これも邦画の一つの爪痕。邦画を語る上では外せない一本だろう。
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