セットアップでもっとキャラクターの説明をすべき。実話ものということでそこのところは素っ飛ばされていると思うのだが、事情を知らない自分（のような観客が、まあそもそもどれほどいるか不明だが…）からすれば、主人公の黒人少年にも、サンドラ姐の家族にも、何の興味も関心も湧いてこない。そのままお話だけが進んでいくから、何やら鼻もちならない道楽的な金持ち家族とえらく無表情な黒人少年のおりなすピグマリオンストーリーがただただ目の前で展開されていくことになり、はっきり言って怖い。

ひとつひとつの葛藤を乗り越えるところも弱い。特に、不正養育の嫌疑をかけられるところ。この作品中で唯一のシリアストーンなのだが、ためを作る間もなく、コロリと解決するから、何のカタルシスもない。

全体的にスウィートな演出、甘甘な解決で、辛口ドライ派の自分としては観るに堪えない部分も多い。ただし、最後の最後で「あ、これ実話なんだ」ということが判ると、これまで書いてきたことも、「まあ、事実だからなぁ」ということで済まされてしまう感があり…。やはり、映画をみるまえに、最低限の知識を仕入れておく必要があるのかもしれない、ということを考えさせられる映画だった。

以上