気に入らない点は１点のみ。サンフン（ヤン・イクチュン）が死んだ後、ヨンジェ（イ・ファン）がいけしゃあしゃあと仕事を続けているという点のみ。それまでの描写でサンフンはマンシク（チョン・マンシク）以外からは憎まれていてもおかしくないことは示されているので、不自然な流れではないがマンシクがヨンジェを許すとはどうも思えず釈然としない。

その他は監督の情念が良く出ていて、強烈な作品である。ラストシーン、サンフンの明るい未来を体現した姉とマンシクの二人を笑顔で見つめたヨニ（キム・コッピ）が、母親を殺した連中と同じようなことをしているヨンジェを冷たい目で見つめる。だが、ヨンジェはサンフンの暗い未来を受け継いでいるということをヨニは知らないのである。サンフンの未来の分岐点にたつヨニ。その構図を感じた時、ある種の恐怖を覚えた。

また韓国からとんでもない作品を投げつける監督が現れた事は間違いない。しかも韓国映画アカデミーと全く関係のないところから、インディペンデントという形で現れたことに驚愕の念を禁じ得ない。『母なる証明』といい、本作といい韓国映画はどこへ行くのかとても楽しみである。

(2010.04.11 シネマライズ)