実は殺人事件のことなどはどうでもよくて、恋人との心理的駆け引きを中心にしたドラマとなっており、発作的な結末も意表をついてて面白い。

今の生活を壊してまで一緒になるつもりはないという女の身勝手さが描かれているのだが、あれぐらいでビクビクする男の小心さに呆れて愛想を尽かしたとも解釈できるので一概に女が悪いとも言えない。そのあたりのさじ加減が絶妙と言えよう。

男の方はテレビの報道に影響され、女の方もマスコミによる報道を被害妄想するわけだが、当時のマスコミの社会への影響力が垣間見られ、（余計なお世話と言うべき）いかにもなワイドショー的なインタビューが事件被害者にされているのが興味深い。ＢＧＭがチャイコフスキーの交響曲5番というのも視聴者泣かせを狙っているようでいかにもワイドショー的である。