[コメント] 告白(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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登場人物たちの「告白」で綴られるこの映画は、文字通り物語るように、謳うように、うねりを持って流れてゆく。強調された構図やライティング、スローモーションは舞台演出を思わせ、だからきっと厳密にはこの「告白」は個々の登場人物の告白ではない。中島哲也の「何か」だ。
だがそれでも野暮な俺は役者たちの「生」が観たくなってしまう。息を吹き返した幼児の溺れる姿を、如何に恋人を理解しようとも殴られれば両手で頭をかばい必死で逃れようとする少女を、自分の拳や額を激しく傷つけてでも叫ぼうとする少年を。(そういう役者の生は中島監督にとって今作品の「何か」でないのだろう)
そういった点で、この映画は殺人者の目に映った妄想の側の物語であり、現実に人間が生命を失なう殺人の現場ではない。
この映画の中で役者たちが切々と訴える心の叫びは、形式化された映像の中で「生」として純化されるのでなく、寧ろ空洞化して行く。それは繰り返し行なわれ、まるで精神世界の不毛さを表現しているとでも言うかのようだ。そこで野暮な俺は、演出によらない彼らの肉体表現でその「生」を補完して欲しいと望んでしまう。
まぁ結局観客の「少年少女」は、皆教室のひとりとして、妄想の側から観るのだろうから、それでいいのかも知れないが。
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しかし『殺人の追憶』('03年/韓)や『犯人に告ぐ』('07年/日)を観た時に「この子役はトラウマにならずに済むだろうか」と心配になってしまったが、今回の藤原 薫などもこんな幼い少年がこんな演技をして大丈夫なのだろうかと思う。
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