[コメント] 川の底からこんにちは(2009/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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「オーッケィ。いずれにせよ俺はドゥーマイベストだからさ」「そういうエコから始めようと思ってる」「サワちゃんは俺のこと好き……だとは思うけど、どう好き?」という三つの台詞には笑いをこらえられなかった。この男はもう人格からふざけている。このふざけの感覚こそが笑いと相性がよいのだ。満島の駆落ちを知って後の遠藤からこのふざけ感覚が希薄になってしまったのは惜しい。同時に映画も笑いよりカタルシスに向けて動き出すことになるだろう。
さて、これはボブ・マーリィ云うところのポジティヴ・ヴァイブレーションが周囲に波及していくさまを正しく描いた映画だが、云うまでもなく、それがあくまでも極限まで突き詰められた「中の下」的ネガティヴィティの反転としてしか出現しないところに作家の発想と時代の気分があらわれているのだろう。開き直った満島が及ぼす影響は多く人間関係の好転として描かれるが、まずは工場の業績回復のさま(=「労働」)にディテールを費やしてくれたほうが私の好みではある(結局「親-子」の話に落ち着かせるあたりが映画の安定感となり、また新世代作家の初期作となるだろう映画としては物足りないところとなる)。いずれにせよ、そのポジティヴィティが「連れ子を保育園に送る自転車疾走」だとか「パック詰めしじみのトラック積み込み作業」だとかの「運動」として撮られたカットがやはりよい。
「遺骨」を雑に扱ってみせるのは『ビッグ・リボウスキ』の「遺灰」由来か。こちらの使い方のほうがエモーショナルだが、笑いは『ビッグ・リボウスキ』のほうが大きい。
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