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[コメント] トイ・ストーリー3(2010/米)

ウッディ主役で考えるなら、全く問題無い良作。だけど、他のオモチャたちももう少し丁寧に作って欲しかったな。それが出来る実力があると思ってた。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 物語としては三部作の有終の美を飾るべく、捨てられたおもちゃ達の行く末が描かれる話として仕上げられている。

 あれだけ子供の頃に夢中になっていたおもちゃも、子供が長ずることによって、徐々に不要のものとなり、やがては飽きられてしまう。

 おもちゃに人格があるとするなら、あれだけ愛されていた自分自身が、子供の成長によって捨てられていく事に対し、どのような思いを持つか。彼らにとってアイデンティティはすべて子供に遊んでもらうことにあったのだから、自分が飽きられてしまったと言う事実を受け入れることは大変なものだ。この作品も冒頭部分は、そういう運命を受け入れていくおもちゃ達に焦点が当てられていく。最初それは寂しさというよりも、理不尽な怒りであり、その後葛藤を経て諦めの境地へと至る(この辺はE・キューブラ・ロスの「死の瞬間」をベースにしているのだろう)。その意味でまさしく捨てられたおもちゃに焦点を当てた見事な教科書通りの物語になっている。

 そして捨てられたおもちゃ達に、新しい希望を与えられた時、彼らはどうするか。その大部分は、それが次善の策であることを知っていても尚それにしがみつく(喩えは悪いが、ガン患者が肉体に激しいダメージを与えることを知っていても抗ガン剤に手を出すのとよく似ている)。彼らにとってはアンディに遊んでもらうことこそが最大の喜びであり、願いであったが、それが叶えられないことを知らされた時、喜んで幼稚園に行こうとしている)。

 ここで特殊なのがウッディだろう。彼だけは自分の主人に対して忠実で、しかも一番愛されていることを知っているため、それは我慢が出来ないことだった。たとえもう遊んでもらうことが出来なくても、あくまで忠義を貫き通し、自分だけはアンディのそばを離れない事を誓う。そしてそのアンディの想いこそが物語を引っ張っていく原動力になるのだ。

 思えばシリーズを通して主人公であったウッディは他のキャラとは明らかに性格が異なるものとして描かれている特徴がある。『トイ・ストーリー』ではそれが主人の愛を独り占めしようとするものとして、『トイ・ストーリー2』では自分の価値を知らされてなおアンディの傍にいる事を選んだおもちゃとして。彼はあくまで一人の主人に忠実な存在として、仲間よりも主人を選ぶ存在なのだ。

 そんなアンディが自分自身のあり方を見つけ、最終的に仲間と共にあることを選ぶ。主人公の成長物語として仕上げられていることが本作の、否シリーズを通しての見所となるだろう。アンディは試練を経ることで、人として(というのはなんか変だが)一皮剥けた存在となることが観ている側にもわかり、「よかったねウッディと最後に言えることが良いのだから。

 本作が安定した良作となっているのは、まさしくウッディの成長物語から全くぶれることなく最後まで突き進んでいるからだ。

 そういう意味で本作は実に素晴らしい物語になってはいるのだが、これまでの2本と較べると、多少不満もないではない。

 一つには、悪役に個性が薄いと言うこと。熊のロッツォの言動もオチも『トイ・ストーリー2』の老人人形プロスペクターと何ら変わることなく、更にオチとして笑えたプロスペクターと較べても没個性になってしまったこと。それは『トイ・ストーリー2』でやったよ。と思わせてしまったのは、物語として痛い。あと、バズの扱いが今ひとつ。ウッディが中心になりすぎて、完全に今回はバディ・ムービーからはずれ、やってることもこれまでの焼き直し。出しにくいのは分かるけど、もう少しバズのための物語を丁寧に作って欲しかったところ。

 それと彼らおもちゃの耐久性があまりにも高すぎるのも少々不満。おもちゃとして遊ばれるようになってから、おそらく10年は経過しているはずの彼らが新品同様であり続けているのは無理があると思えてしまう。もう少しぼろぼろになっていたおもちゃの話になると思っていただけに、その部分は不満が残ってしまう。

 でも概ね本当にうまく作られているので、これで良いのだろう。少なくとも「1」「2」と観ている人にとっては安心して観られる良作に仕上がってるのは事実なのだから。

(評価:★4)

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