[コメント] 借りぐらしのアリエッティ(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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映画としては感心しないというか、共感するポイントを見出せなかったけれど、主人公のショウ少年が唐突かつ暴力的に、小人たちの家のキッチンを取り替えてしまうシーンがやけに違和感あった。
ドールハウスのキッチンが精巧だという程度の前振りはあった。だが少年が小人たちの住処を探し当てていたという描写もなければ、彼らが自分たちのキッチンをどう思っていたかなどわかりようもないはずである。なのに、屋根を引っぺがしたかと思うと壁ごとキッチンを抜き取るは、彼らが驚きやしないかとか、ケガしたりしないかとか心配する様子はまるでなしに、上からドールハウスのキッチンをねじ込む。小人目線が貫かれていて、人間が軽い気持ちで行った行為が、小人である彼らにどういう影響をもたらすか、ということを表現するシーンとしてうまく機能してはいた。また、そもそもそんな経緯で前振りがまるでないもので、観客にとっても(これは誰がやってるのか?)しばし不明であるという、要するにドラマのアクセントとして機能している訳だが、それにしても乱暴で悪質な行為だと思わされた。
しかもショウ少年はこの後、アリエッティに向かって(展開から予想される台詞ではあったが)こうのたまうのである。「(あのキッチンを)気に入ってくれたかい?」
軍事力を背景によその国へズカズカ上がり込んで、勝手に鉄道を敷いたりダムを建設したりして、「われわれはいいこともした」と言い張る植民地主義者の感性とどこが違うだろう。確かにいいこともしたには違いない。
原作はイギリスだというからさもありなんだが、心臓を患い死にかけているショウ少年は、さしずめ<英国病>と言われていた頃の落ち目の大英帝国か。
住環境を人間に破壊されても健気に前向きに生きていこうとする小人たちの姿を見て、ショウ少年は「生きる勇気をもらった」んだそうである。
いい気なものである。
65/100(10/07/25見)
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