[コメント] 十三人の刺客(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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三池崇史は、私の中で「色々やりたいことを自由にやってる。ように見える人」だった。破天荒に見えて、実はただの雇われ店長歴35年。みたいな。この人の映画は無造作なようで窮屈で、迫力があるようでテンポが悪く間延びする。品性はなく、エロはエロ、グロはグロ。私はそれが嫌いだった。
今回もそれが変わったわけではないけど、やっと「従来のやり方に沿うものか」という意志が伝わってきた。ライティングは極力落とし、女性の化粧なども見栄えを優先せず、若い女であっても既婚者ならまゆを落としお歯黒をするという本来の姿を忠実に再現する。(その惨殺される若妻が谷村美月であることがより残酷生を強める)吹石一恵を始めとする遊女の風俗も華美なところがなくていい。(脇役の遊女達がブスであればあるほど悲惨さが滲む)襲撃シーンまでの話の運びも割と淡々としていて見やすい。その分クライマックスが長すぎて少しだれるけど。
こだわりであるリアリティの追求というのが、やっと名実共になってきたというのか、「俺は本物志向だ!見た目だけ気にした演出なんて糞くらえ!」とでもいいたげな心の叫びがやっと行動を伴ったというか。私が俳優を目指す男ならこういう映画にでたいと思うだろう。(そんな中で、長年「見栄えだけのチャンバラ」でやってきた松方弘樹が、身体に染みついた従来の太刀さばきを、押さえても漂ってしまう香のように全身から放ちながら一刺客として奮闘している姿が、粗野で未完成な俳優達の中で光っていた)
しかしあんな殿様、毒殺でもすれば済むだろうに。一揆でもクーデターでもなく側近の幹部が計画した暗殺なら、内部でどうにでもなりそう。なんでこんな大がかりな暗殺計画を立てるのかよくわからん。(それはそれがミソのドラマだからー)
勧善懲悪物を一級品にする「魅力的な悪役」が二人も揃ったことが、この映画を諦めずに最後まで観られた大きな理由。>市川正親・稲垣吾朗
(2011/12/10 DVD)
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