[コメント] 冬の小鳥(2009/韓国=仏)
冒頭の数シーンで見せるジニ(キム・セロン)の屈託ない笑顔がすべてである。それは、どこにでもいる少女が平穏の証しとして見せる至福の表情だ。平凡さの発露である笑い顔を取り戻すために、彼女たちは自らの「運命」を引き受けなければならないという過酷。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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失くしてしまった笑い顔を、運命と引き換えに取り戻そうと苦闘する女たちの物語だ。養父母候補のアメリカ人夫妻のまえで、自らの運命を切り開こうとする少女スッキ(パク・ドヨン)が見せる目いっぱいの「作り笑い」を誰が責められるだろうか。占いに没頭することで運命を引き受け、思いを寄せる男の前で「はにかみの笑顔」を見せる、身体的ハンディキャップを背負った娘イェシン(コ・アソン)の痛々しい純心。いったいどんな過去があったのだろうか、寮母(パク・ミョンシン)に至っては、笑い顔を封印することで運命を受け入れているかのようだ。やっと自らの運命と向き合いパリの空港に向かったジニ(キム・セロン)が、次に手にすることができるのはどんな種類の笑い顔なのだろうか。
ペシミズムやナルシズムに陥りそうな自伝的悲惨を、突き放したように距離を置きながら描くウニー・ルコントの強靭さに感銘を受ける。彼女は、一旦失くしてしまった「屈託なき平凡な笑顔」など二度と取り戻せないのだと経験的に語っているようにも見える。この映画には、そんなある種の「欠損」が漂っている。
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