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[コメント] キック・アス(2010/英=米)

「ヒーローものの世界が現実になる物語」の部分を通して欲しかった
Bunge

この映画、キックアスの主人公はアメコミヲタクという設定。いったいトランスフォーマーの何匹目のドジョウを狙うつもりなのかと思い、観始めはあまり期待していなかった。ところが予想外に作りこんだ作品だった。主人公の活躍の様子がyoutubeにアップされるエピソードなどは、わが国でもヲタ芸をニコニコ動画で配信している世相からしてとてもタイムリーな描写であり、自己顕示に餓えた現代人の心をくすぐる。

日本にもゼブラーマンといった「ヒーローものの世界が現実になる物語」が存在するものの、今作のほうが圧倒的に面白い。しかしそれだけに最後の流れが残念だ。この作品の売りに沿った展開とは言い難く、ヒロインをライトアップするための構成へとスライドしていく。

極めて幼い少女が繰り広げる残酷な殺戮を正当化するだけの必然性に欠けている。彼女の設定年齢が数歳上がったとして、物語に何の問題が生じるだろう?

たとえば、どこにでもいる普通の女の子に「どう足掻いても自分が闘うしかない」という状況が成り立ち、緻密に描かれた葛藤の末に人を殺める、といったバックボーンなら観ていて納得がいく。

べつの方向性から考えるならば「更生施設からスカウトした本物の不良少女役者による迫力のスラングが飛び交う暴力シーン」を見せれば、それはそれで一種の「売り」として成立するだろう。

しかし本作の少女による暴力描写からは芸術的意図などまったく感じられないし、かといって商業的な快楽も物足りない。彼女のアクションシーンには長めの尺をとってあるので、同時進行で「主人公と敵との因縁のかけあい」を描くことも十分可能だったのではないだろうか?

この種のジャンルの教科書的流れを作ったのだから、最後は「平凡な展開」が見たかった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)山ちゃん おーい粗茶[*] Orpheus ぽんしゅう[*]

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