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[コメント] 白いリボン(2009/独=オーストリア=仏=伊)

第一次大戦前夜という時代設定はあるものの、この映画の厳しい人間洞察は、とうてい映画の中の出来事なんだと映画と自分自身とを切り離すことはできない。見ていてまさに不快である。汚辱の映画である。しかも善という概念からは対局的な位置にある。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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けれどこの映画こそ今現代人が見なければならない映画でもあるのだ。

これでもか、これでもかと人間の奥底にある悪意を剥き出しにする。北ドイツの暗い陰鬱な空気がカメラを通して観客に伝わる。人間が、本当は見たくないものを、どどーとハネケは抉り出す。人間が悪意を常に抱えているから、それは暗い村に伝染し、それは弱者、子供にも伝わって行く。それは宗教、思想、教育という媒体を通じて蔓延していくことになる。

この無力感、厭世感はベルイマンに似てはいるが救いの手をほおり出した冷酷さはベルイマンより始末が悪い。なぜならベルイマンは人間の本質的な弱さを観客に露呈していた。だから、観客の一人一人に映画を見た後でかすかな光明は感じさせていた。

けれどハネケはそれさえ拒否している。時代設定をナチスの台頭前にしているが、恐らく時代に関係なく人間の本質を問うている作品であることから、現代においても起こりえる、いやもしくは起こっている事柄を象徴または揶揄しているのである。悪とは何か。人間とは何か。付随する宗教、思想とは何か。この世にあるすべてを問うているのである。

であるからにして、音楽はほとんどなく、映像も北欧調の厳しき冷たさが覆っている。ぬくもりもない。

人間があるべきぬくもりを持てる時が一体全体本当に来るのであろうか、、。そんな問いかけをしたハネケ一流のリアリズム映画である。当然映像は緻密であるが、カラーでは表出しないハネケの決意のようなものも感じられる映画であります。

(評価:★4)

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