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[コメント] 女の園(1954/日)

メロドラマめいたタイトルとは裏腹にシビアな作品だった。私立の女子大生たちと、不条理な学園の関係、また親と娘の関係を描いており、原作の「人工庭園」の方がタイトルはしっくり来る。当時のスター大挙出演だがクールな山本和子の存在が光る。
TOBBY

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まず演技面で注目すると生真面目だけれど不器用で、学業も恋愛も親子関係もうまくゆかないという野暮ったい役柄を高峰秀子がリアルに熱演。女優としては、やりがいのありそうな役柄だが迫真に迫り過ぎて、それが逆に本当に暗く重い存在になってしまっている。もう少し演技も演出もライトにしても物語上支障は無いはず。久我美子演じる学生運動に走る令嬢は、ドライで小気味良い。登場するだけで高峰秀子の演じる生徒とは対照的に息吹を感じる。彼女は劇中、旧式な考えの持ち主の独善的な教師(高峰三枝子)と2度も対峙し演技の火花を散らせ名場面を演じる。役柄的に儲け役でもあるが悪役の高峰三枝子をやり込めるシーンは爽快。しかし彼女も学生運動の先輩格の生徒(山本和子)と対峙すると彼女の方が遥かに広い視野で先を見ており敗北を期す。この理知的で余裕のある山本演じる女学生が良い。先の二人に対するともう一人のヒロイン岸恵子は、ごく普通の女子大生。特に深い考えもないまま青春を謳歌する姿は呑気なようで味気なさも醸す。愚図な高峰秀子に対する厳しい態度が、ちょっと意地悪で、当時の若さと細面のルックスから妙にリアル。この女優は年をとってから優しさが滲んだタイプなんだなぁと痛感。また敵役を一身に集めた高峰三枝子は自分の立場を利用し理不尽な御託を並べて、やりたい放題の役柄なのだが彼女が演じるから説得力がある。他の女優なら(山田五十鈴なら可)こんなに個性の強い生徒たちを敵に回してこの教師像は演じられなかったはず。また鼻筋が通り、高い鼻なので横顔がノーブルなのも憎たらしいだけじゃなく、品格を与えていた。脇役陣は岸の軽快な伯母を演じた浪花千恵子、高峰秀子の彼氏(田村高廣)の下宿のオバさん演じた人情味厚い望月優子らの演技が僅かな出番ながらも光る。ただ大根役者もちゃんといてのボーイフレンドを演じた田浦正巳は手足は長いが異様な棒読み。「もう来ないで!」と岸が叩き付けるのに観客も即座に賛同するはず(関係ないが若い頃の金子信雄杉山とく子も拝める)。本作の舞台は当時としても閉鎖的すぎるであろう京都の私立女子大を舞台に描かれている。だから古臭さや現地味の薄さが、もうもうと立ちこめるものの登場人物たちの人間像が丁寧に綴られておりヒューマンドラマとして興味深く見ることが出来た。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] TOMIMORI[*]

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