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[コメント] 女の園(1954/日)

自由を謳歌しているはずの私たちが本来的な“自由の重さ”をしっかりと受け止められているのでしょうか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 阿部知二の小説「人工庭園」の映画化で、封建体制的学校制度とそれに反発する学生たちを描いた、いわば“民主的”な作品だが、それを徹底して明るく撮った『青い山脈』(1957)とは全く異なり、リアリティにあふれる重い作品として仕上げられている。

 私に関しては、初見の時は唐突で救いようのない終わり方にちょっと引いたし、中途半端な印象を持ったものだが、今はかなり違った観方が出来ている。

 木下監督は戦中時から左翼思想を持っていたらしいが、軍部の圧力でそれを抑えて高揚映画でデビューしたと言う経緯を持ち、それを随分長く悔いていた。しかしその悔いがあるからこそ、木下監督の作品は単なる自由謳歌ではなく、自由とは何かを犠牲にするもの。あるいは何かを得るために犠牲にされるものとして考えることができよう。事実監督にとってはかなりの陽性であるはずの『喜びも悲しみも幾年月』(1957)でさえ、自由と義務の狭間で悩む姿がしっかりと描かれていた。

 本作はそんな監督作品の中でも最もストレートで重い話の一つととして数えられるだろう。

 旧弊がはびこり、それを誇りとしてるかのような学校と、自分たちの青春がそんな無味乾燥なものに押し込められることを拒否した女学生たち。設定だけで言えば、確かに自由謳歌の形へと持っていきそうな物語構造なのだが、曲がりなりにもその“自由”なるものを手に入れる過程で失ったものがどれほど重いものなのか。それこそがこの物語の主題だ。

 本来彼女はそんなことをまったく思ってもいなかったはずだし、物語自体も彼女の死が唐突な形で物語を終わらせてしまっているが、結果として芳江は自由を得るための礎。殉教者となっていく。こうやって犠牲を払いつつ、今の教育と言うのが作られていったのは事実なのだ。個人的には教育改革は常に重要だと思ってるけど、一方ではそのような痛みの歴史があったことも忘れてはならないと思ってる。

 自由とは得るまでに大変な苦労を要するが、一旦得てしまうと、後は坂を転がり落ちるように堕落していく。現代の目で改めて本作を観ると、かなり新鮮な思いで観ることが出来る。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)TOMIMORI[*] ぽんしゅう[*]

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