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[コメント] ヘヴンズ ストーリー(2010/日)

例の山口県光市で妻子を殺された真面目そうな青年を今でもみんな覚えている。でも僕はあまり見ないことにしていた。彼の「犯人が出てきたら私が殺します。」といった言葉がどうも強烈で、
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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人間の深部に近いところでうごめくもやもやが自分を持ちきれなくするのだ。

でも恐れていたその言葉が映画の初期の段階で出現する。若い父親が同じセリフをテレビで発している。両親、姉を殺されて一人生き残った小学生の女児はテレビの彼を見て店頭で失禁してしまう。大人の僕ですら怖い言葉なのだから女児はどう受け止めたのか。

何も起こり得ない平凡な日常にも死は突然襲いかかる。一家団欒の日々を送っていた男はそれでも平凡な仕事を続け日常を生きる。映画では鍵屋になって普通に生きている。そして一人の女と出逢い生活を設ける。あのときと同じく一人の子供にも恵まれる。

しかし、10年の歳月を経て普通に生活をしている男に、成長した女子高生(女児)は「憎むべき人間は出所しているのにあなたは何もしていない。あなたはすることがあるはずだ。」と男に告げ復讐をそそのかす。それは女子高生の復讐でもあったから。

それからは男の魂の遍歴が再度始まる。それは復讐することとは何ぞや?ということなのだが、結構日本映画では珍しい罪と罰と救済のモチーフへと入り込んでゆく。

加害者側の救済に携わる認知症の中年女の存在がこの映画では異色で、何だか一番難しい命題のようにも思える。彼女は認知症になるということは死を意味するものだ思っている。だからこそ、もはや死刑囚に近く、肉体的にも若い若者に興味を持つ。それは死にゆく者の生への惜別の念だろうか、若くして老人になるという苦悩を若者と引きずることで自分を全うしようとしている。

で、話はここまですこぶる面白かった。刑事なのに贖罪のために仕事人になっている話などはとても秀逸だ。しかし、ラスト近く関係者が一斉に死んでしまうのだ。これはいかにも、ええ〜何事だ、と言いたくなる。すべての人間が罪と罰の意識を持つことなくただ死にやるのであればいかなるドラマも必要としないのではあるまいか。苦悩が解き放たれるのは、生きて生きて永らえて生きてこそなのだ。

最終章の女子高生の魂の終焉も、この壮大な物語にしては矮小過ぎる、と思う。ただ面白いと思ったのは、みんな黄泉の国へ旅立っても思う人を陰でぽつねんと座って見ているシーンだ。

刑事は息子を。加害者と認知症の女は並んで下界を眺めている。しかし、妻子供を殺されて魂の遍歴を繰り返した男は二度目の妻と子供を見ている。殺害された方の妻と子供には会いに行かないのか。この意味を果たして観客たる僕たちは考えなければならないのだろうか、、。最後映画館を出てもどうしても気になってしまった。

でも、4時間半、長くは感じませんでした。ラストが惜しかったかなあ。力作だと思います。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得[*] ぽんしゅう[*]

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