[コメント] 冷たい熱帯魚(2010/日)
己の欲望を確実に成就させることで、自身の「存在」を維持し続ける村田(でんでん)。妻の愛子(黒沢あすか)は、他者に依存することで自らの「存在」を確認し欲望を消費する。歪んだ正と負が生む強烈な悪意の磁場は、いともたやすく市井の迷い人の「存在」を翻弄する。
でんでんと黒沢あすかが素晴しい。押しつけがましい善意と、抜きさしならない悪意が、わずか数日(克明な日時表示が効果的)で、ダルな日常のなかに醸成してしまう蟻地獄のような磁場のリアリティ。
禍々しいまでの冒頭の豪雨や、厳粛さのかけらもない過剰に合理な蝋燭の点火、まさに冷たさをたたえた巨大熱帯魚店と肉感的でありながら中性的な女子店員たちも、日常のなかの不穏をさりげなくかき立てる。園子温の血なまぐさい露悪も、偶然か必然か、今回は映画の文脈にすっぽり納まり当を得た効果を生んでいた。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。