埼玉愛犬家連続殺人事件を基にしている、という一点で完全な作り物であるホラー映画などよりも格段に怖ろしい。

ホラーやスプラッタームービー、お化け屋敷なんかは全然平気なんだけど。これは怖かった。

何が怖いって、やっぱり人間が一番怖い。実際、解体作業やなんかは別に怖ろしい描写ではない。普通。『ＳＡＷ』とかの方が上手い。

ただ、「また会おう、山田君ｗ　お元気で！ｗ」とか笑いながら言って人骨を焼く人間描写が怖ろしい。

現実にこんな人間が、人間の皮を被った化け物が、存在しているということが怖ろしい。

村田（でんでん）の演技は見るものを納得させる。どうして社本(吹越満)が抗えなかったのか、すぐに警察に通報できなかったのか、なぜか納得させられてしまう。

こういうヤツは現実にいる。やたらと声がデカく相手を威圧させるハッタリと、懐柔させるテクニック、かと思えば機嫌次第で見せる愛想の良さ、そしてコントロールできる狂気を持っているヤツ。人を殺さないまでも、相手を思うがままに操ってしまうヤツはいる。世の中で割りとワンマン社長や自信家と言われている人に多いタイプ。

吉田の弟たちに対する態度、筒井との接し方、社本にくらわすビンタ。

全てが演技ではなく本物と思えてしまう。

でんでんではなく、村田だと思ってしまう。

ラストは脚色されているが、社本がキレるまでのタイムリミットが上手い演出だと思った。

娘が父親に言う。「くたばれくたばれ」が余りに惨めで陰湿で救いようのないものに仕上がった。最悪だ。だが、おいしい。そんな一品。

邦画で、こんなに見せそうで見せそうもない女優が大胆におっぱいを露出してくれて、内臓グチャグチャの死体損壊シーンもしっかり描写してくれるなんて思ってもみなかった。ごちそうさま。