[コメント] 山の音(1954/日)
我が強いと言うのか、自分の感情の筋を通すことを最優先する人格を演じたときの原節子には、高貴で危険な魅力がある。
それは、世の軽薄な風潮を吹き飛ばすほどの、あるいは世の風潮の方で恥じて消え入りたくなるほどの魅力、と言っていいかもしれない。これと比べると(同じく成瀬作品で重要なヒロインを演じてきた)高峰秀子の演じる人物には、より社会性がある。高峰の場合は、自らの感情に流されて、世間での立ち居振る舞いを失念したキャラクターにおいて、最も魅力を放つ。原の方は、流されるような感情、なんてものではなくて、むしろそれは岩のように固まってガンと立ちはだかる。そしてその「岩」を理解する存在が身近にいてくれることが、「原節子」には断然嬉しいのだ。私は、山村聡(舅)と原(嫁)の間に肉体的な紐帯を想定する必要は微塵もないと思う。
原も高峰もその後の人生において、世間が彼女らに抱いたイメージに殉じているようなところがある(お二人ともご存命でいらっしゃいますが)。
80/100(07/05/13記)
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