[コメント] カリガリ博士(1919/独)
プロット上の役割の重要さという意味でも、カリガリ−ヴェルナー・クラウスと、チェザーレ−コンラート・ファイトの2人が同程度のレベルで主役と云うべきで、回想の主体であるフランシス青年−フリードリッヒ・フェーエルは狂言回しに過ぎない。
また、美術装置に瞠目する映画である、ということは衆目の一致するところだと思うが、これもタイトルが示している。キャビネットを含めた美術装置が主役の映画だ。ホルステンヴァルという名の町の美術が顕著で、独特の歪んだ斜めの装置、傾いたセット。屋内もドアや窓は斜め。テントの屋根の斜めなど、いくぶん湾曲の加わった斜めの線が美術の基調になっている。フランシスが上っていく警察署に通じる階段なんかも緩く左に湾曲した装置だ。
その他の演出・画面造型的な特徴として、アイリスイン/アウトの頻出と、まるでアイリスを途中で止めたような(実際途中で止めるカットもある)黒枠の画面を使った視点の限定が上げられるだろう。これは頻出というよりも濫発と云った方がいいぐらいで、ちょっとクドいと思いながら見た場面もある。
また、構図は制作年代的に定点的な引きの画が多いけれど、フルショットからウエストショットへのアクション繋ぎっぽいカッティングはいくつか見られる。いやそれ以上に、縦(奥)への意識がよく現れている画面造型が反復されて、これは見応えがある。例えばファーストカットは、男が2人、画面手前の左に座っていて、画面奥から手前に若い娘−リル・ダゴファーが歩いてくるというものだ。これと同じような配置は中盤にもあって、画面左手前のベッドに娘が寝ていて、画面奥からチェザーレが侵入し手前に歩いてくるショット。その他、屋根の上の遊歩道のような通路(チェザーレが娘を置いて逃げる場所)のショットの反復なんかでも指摘ができる。
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