[コメント] トランスフォーマー ダークサイド・ムーン(2011/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
一作目、二作目とも、出来は悪いものではない。むしろ「あのベイがここまで!」と言うくらいしっかりしたものが作られてたので、かえって驚かされたくらいだが、この3作を続けて観てみると、この二人の力関係が少しずつ変化している課程を見てる気にさせられる。
一作目はあの大味なベイらしからぬ緻密な描写とテンポの良さがあり、むしろスピルバーグが監督と言っても不思議ではない出来に仕上がっていた。
対して二作目は、かなり荒削りになって派手さばかりが前面に出ていた。テンポの良さは薄れ、ダレ場も多く、力業で見せようという本来のベイらしさが強まっているかのような印象あり。
結果として一作目はスピルバーグらしさが、二作目はベイらしさが強調されていたが、三作目の本作は、明らかに更にベイらしさが強くなっている印象を受ける。
二作目以上に大味な物語展開。不必要な部分も多く、ジョークも外し気味。派手なだけで後に何も残らない物語構造。爆発の多用。でもこれがベイらしさなのだ。
でもスピルバーグらしさは後退したとはいえ、大味な物語展開をつなぐシャープな演出は本作でもきちんと存在しており、ダレ場もちゃんと見所にして飽きさせない作りはスピルバーグ健在という印象を持たせてくれる。結局ベイの大味さをきちんと受け止められるのはこの人しかいない。たとえどれだけ話がおかしくなっていても、それを受け止め、ちゃんと映画に出来たのだから、それだけで良いだろう。
玩具企画から誕生したトランスフォーマーは、アメリカでのアニメ化を皮切りとして多角的な映像作品が作られてきた。その中で映画版の特徴であり面白さは、オートボット対ディセプティコンの対立構造よりも人間の作り出した組織との関わりが大きいと言う点にあるだろう。
アニメ版では主役はオートボットであるため、人間はディセプティコンの攻撃に逃げ回るだけで良い。オートボット達は正義のヒーローとして弱い人間を守る存在なのだから。
だが映画の場合、主役は人間側にある。この状態でアニメと同じ事をやったら、主人公が全然目立たないという問題が起こってしまう。実際一作目で主人公のサムは何が何だか分からないうちに戦いに巻き込まれ、逃げ回ってる内に終わってしまってた。それに対し続編では既にオートボットとの連携がなされた後の話になっている。
だからこそ本作は人間の努力を最大限演出してみせた。オートボットと連携するNESTのみならず、アメリカ軍もそれぞれディセプティコンと戦い、実際にこの話ではオートボットの戦士よりも人間の方がより多くのディセプティコンを倒しているくらいだ。
思うに、この三部作は、地球を守る主権を人間が取り戻すまでを描いた作品としても見ることが出来る。1作目が、突然飛来したロボット同士の戦いに巻き込まれて右往左往するだけだったのに、ここまで人間は成長した。人間の方を中心に見るなら、極端に人間は進化しているのである。
そして人間の力で運命を切り開くという構図は、実はベイ監督作品に共通して見られる構図でもある。だからこそ本作は自分のカラーを前面に押し出すことが出来たのだろう。
いずれにせよ、頭から尻尾までベイらしさが出ている作品として本作は受け取るべきだろう。
これからは蛇足だが、本作を観ていていくつか感じた事。
新世紀に入ってなるだけ人が死ぬ描写は抑えられるようになってきた。特にレーティングでこどもも観る作品は病的なほどに人の死に敏感で、アクション作品でも全年齢対象作は大抵人を殺さぬよう注意が払われていたと思う。それが最近の作りだったと思うのだが、この作品では割と平気で人を殺すシーンが多く出ている感じ。熱射砲によって人間が骨だけになるシーンなんかはちょっとやり過ぎかな?あるいは少しそう言う規制が緩くなっているのかな?
もう一つ、これもベイらしさかもしれないが、どっかの映画から場面を引っ張ってくるのも随分とやり過ぎ。シカゴでディセプティコンの戦艦が降りてくるとか、セイバートロン星がやってくるとかは『インデペンデンス・デイ』(1996)の構図丸パクリで、ラストシーンが『赤い河』(1948)の構造と同じなのはともかく、劇中デジャヴ感がもの凄い。
オープニングの月の遺跡発掘シーンから始まり、高速道路で敵の攻撃を避けるバンブルビーのアクションもどこかで…で、飛ぶ人間が出てきたところで確信したが、これ『怪獣大決戦 ヤンガリー』(2000)からだろ?そりゃあの作品と較べたら5倍くらいスマートにはなってるけど、やってることがまんまじゃないか。
なんかそう思ったら凄くこの作品、私の中で落ち着いた。
そうだ。これ、馬鹿映画なんだ。そう思ったら、もの凄く納得がいった。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。