[コメント] カンパニー・メン(2011/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
名前で判断するというのは望ましい態度ではないけれども、やはりロジャー・ディーキンス。時折ヴィスタ・サイズが窮屈に感じられることはあるものの、ほぼ安心して画面に身を委ねていられるクォリティを保っている。終盤の廃造船所ロケも抜けがよくて、結末に向けて映画が「開かれる」感覚がある。曲がりなりにも造船を生業とする企業から物語を始めながら造船作業現場のシーンがひとつもないとは何事か、と思って見ていたところにこの廃造船所。そして最後の最後に一隻だけ船を走らせるというあたり、ウェルズは映像ドラマの語り方を押さえている。
お話はリアルと云えばリアルだろうし、ベン・アフレックを中心に見る限りではやはりファンタジーにすぎないとも云えるだろう。こんなに素敵な奥さんがいて、新たに起業してまで再雇用してくれる元上司もいるのだからアフレックはやはり上位数パーセントの恵まれた男、一度や二度の失業でガタガタを抜かすな、アイウィルウィーン!とかウルセエ。という思いは確かにある。だが奥さんローズマリー・デウィットの在り方にはそれでも感動がある。「あなたには私がいるわ(You have me)」という単純な語の連なりには美しい切実さが宿っている。
ケヴィン・コスナーの助演ぶりもいい。もう主演スターとしての賞味期限は怪しい人かもしれないが、このような脇役を演じることに歓びを見出せる謙虚さを持っているならば、今後のキャリアもまだまだ安泰だろう。本人の自覚の有無はどうであれ、また善かれ悪しかれ、スクリーン上の彼はいつもアメリカ合衆国(の一部)の象徴として生きている。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。