[コメント] ピーウィーの大冒険(1985/米)
映っているものは確かに奇妙だが、撮影自体はほとんどトラディショナルと云ってもよいもので、決して「大冒険」していない。しかし異形のキャラクタとデザインによって紡がれるこの物語にとってはむしろそのほうがふさわしい。
ティム・バートンはおのれの脳内にうごめくデザインや物語を過剰なまでに具現化していくタイプの作家とみなされがちだが、同時に卓越したバランス感覚の持ち主でもある。たとえば、現実の基準から云えばどう見ても「ヤバいおっさん」であるピーウィー・ハーマンに対して「生理的に受け付けない」「見るのもおぞましい」などと否定的感情を抱く観客は意外と少ないのではないか。それはもちろんハーマン=ポール・ルーベンスのキャラクタ造型の絶妙なさじ加減によるところが大きいのだが、バートンによるハーマンの「見せ方」(即ち「演出」)のバランスが優れていたことにもよる。
あるいは、それについては「ピーウィー・ハーマンというキャラクタは安直に『聖愚者』化してしまうことを免れている」という云い方もできる。これはハーマン本人の性質のためというよりも、異形の者であるはずのハーマンが無批判的に受け容れられている楽園のような作品世界が構築されているからであり(受け容れられていれば聖者にも愚者にもなりようがない)、それはまぎれもなくバートンの功績である。
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