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[コメント] サラの鍵(2010/仏)

人間の、いのちのつながり。それは限りない歴史の悲鳴、喜び、慈しみ、愛を通して現代に至っている。人のあり方を問う強烈な秀作である。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ただ弟を救おうと鍵を掛けてしまった姉は、その行為により結果として自分の命を永らえることになる。鍵を掛けなければ恐らく家族全滅だったろうから、やはり彼女はこの行為を罪と捉えて苦しんだが、いのちの循環は絶えることはなかったのであり、結果としてはよしとしなければいけないのではないだろうか。

ナチスに加担せざるを得なかったフランス当局の無謀さを我々は非難することは出来ないことを知っている。戦争とはそんなものである。生き延びるために人間がやってしまったことにわれわれ現代の平和を多少でも謳歌している者が何かを言うことは出来ない。

映画ではその自責の念を、例えば鉄格子から少女たちを逃がしてあげる守衛とか、危険を冒してまで少女をかくまう老夫婦に投影させている。あの異常時では自分の命と引き換えに行うべき勇気の行動なのである。

サラがアメリカに渡り子供を出産した時でさえ、悪夢が脳裏に広がり即キリスト教に洗礼させる。それはあくまで我が子を守りたいという自衛本能であろう。戦争(政治体制)への恐怖が彼女のすべてを打ちのめしている。

ジャーナリストのジュリアの、サラの息子の問いに対して答える「サラよ」という命名の一言は、人間のいのちのつながりを深く感じるとともに、先人たちの愛まで感じてしまうほどの強烈な感動となって我が身に降りかかる。

本当にしばらくぶりの静かな感動作です。名作として後世に残るのではないかと思われます。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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