[コメント] 永遠の僕たち(2011/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ガス・ヴァン・サント監督としては『グッド・ウィル・ハンティング』以来の力作ではないでしょうか。すばらしいストーリーです。
筋書きは省略しますが、一言で言うと「余命少ない少女と、両親を亡くして自滅気味の少年のお話」ということになります。
ただ、この映画の特徴は、そんな主人公の少年に付き添う幽霊の存在。
これが日本の特攻隊で命を失い、好きな女性に手紙を渡すことすらできなかった青年将校なわけです。加瀬亮さんが上手に演じています。見事でした。
冒頭、主人公の少年は自分が路上で死んだときのシーンを思い描いて、道路に自分の輪郭をチョークで書き残します。
そして、いたる場所の葬儀に出席して、いたずらっぽい少女と巡り合うんですね。
ここからは、ある意味単調なお話。
でもかつて『ある愛の詩』などもそうですが、男女の恋愛って客観的に見ると単調なものなんです。時々どうでもいいことで喧嘩してみたり。
結局最後、少女は病魔に勝てずこの世を去るのですが、ずっと少年にしか見えなかった青年将校が少女にも現れるところで終わります。
とかく幽霊のお話というと『ゴースト』のようなイメージを抱きますが、この映画のある意味中心である日本人の青年将校は、他の幽霊と少し異なります。何しろ主人公を思い切りぶん殴ったりするんですよね。これがすごい。
そしてラストシーン。
少女の葬儀に参列した少年は、一言列席者の前で何かを伝えようとします。
しかし、壇上のマイクの前に立った彼に去来するのは、少女との思い出ばかり。フラッシュバックする少女とも思い出。それがどんどん重なるんですね。美しいシーンが。
で、最後の少年は小さく微笑んで終わります。
・・・・・・
このシーンで私は恥ずかしげもなく暗い映画館の中で思い切り泣いてしまいました。
美しい思い出と孤独の対比。
でも彼はそこで泣かずに、小さく笑顔を見せたんですね。この健気な笑顔でラスト。
もう泣いた泣いた。
映画館の客も誰一人立ち上がる人もなく、エンドロールが終わり、場内が明るくなるまでずっと静かに見ていました。(すすり泣きも聞こえました。)
主人公の少年を演じるヘンリー・ホッパーはデニス・ホッパーの息子さんなんですね。初めて知りました。そういえば目元がお父さんにちょっと似てたかも。
少女役のミア・ワシコウスカもいいですね。若い頃のミア・ファローとケイト・ブランシェットが重なるような美しさ。見事な演技でした。
そしてなんと言っても加瀬亮さんです。
うまいなー。英語の発音もばっちりだし。日本人としての姿勢を上手に演じていました。最後の燕尾服はどうかとも思いますが、ハリウッド映画に出るまで出世したなんて信じられません。
こんなすばらしい映画に出ていたなんてまったく知りませんでした。
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