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[コメント] メランコリア(2011/デンマーク=スウェーデン=仏=独)

このキルスティン・ダンストの美しさはどうだ。虚ろな表情もたまらん。就中、第二部における飾り気を欠いた髪型と衣裳の彼女こそマイ・ベスト・ダンストと認定したい。これまでダンストを醜女であるかのごとく罵ってきた輩どもから前言撤回の念書を取るべく、私はこの一作を引っ提げて諸国を行脚しよう。
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メランコリア』は幼稚な映画だ。ラース・フォン・トリアーは小賢しい演出家だ。しかし、憎めない。たとえば、役名と言語から察する限り、舞台はアメリカ合衆国に置かれているのだと思われる。が、まるでそうは見えない。それもそのはずで、実際の撮影はスウェーデンで行われたようだ。むろん舞台と異なる地で撮影することはむしろ映画制作にとって主流の方法であるとさえ云えるが、ここで指摘したいのは『メランコリア』がそれを粉飾しない、その形跡すらないということだ。もっとも『ドッグヴィル』のフォン・トリアーにとってみればその程度のことは朝飯前だろう。しかし舞台と撮影地の不整合によるディエジェシスの抽象化は、あるいはここで『ドッグヴィル』『マンダレイ』以上の効果をもたらしている。すなわち一個人の心象と世界の運動を直結した形で認識する世界観のあらわれである。もちろんそれは幼稚な(ゆえに親しみもある)世界観だろう。また「効果」と云えば聞こえはよいが、小賢しいエクスキューズにすぎないとも云える。しかしそこには憎みきれない可愛げがある。

キーファー・サザーランドが中年期における映画の代表作を得たことも言祝ぎたい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ペペロンチーノ[*] MSRkb けにろん[*] セント[*]

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