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[コメント] 孤島の王(2010/ノルウェー=仏=スウェーデン=ポーランド)

製作および本国での公開年を鑑みれば、世界情勢(アラブ諸国における民主化運動)と歩を合わせた『猿の惑星 創世記』に先んじる「革命」の映画だと云えるだろう。もちろん、両作ともカリスマ的なリーダを擁している点において、あくまでも前代的な革命を描いているとの但し書きは必要かもしれないけれど。
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**ネタバレ注意**
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「非行少年の矯正施設」が、その性質と環境において、さまざまな映画の風景を喚起させながらも独特のニュアンスを獲得している。というのはすなわちこの施設は「寄宿舎」「孤児院」「収容所」「監獄」といったそれぞれ映画の一ジャンルを形成できるほどの舞台のどれでもあり、またどれでもない。そして「反抗」が『大脱走』や『アルカトラズからの脱出』におけるような「脱走」としてではなく(もちろんその要素も無ではないのだが)、暴力的な「蜂起」として立ち現れる必然を適切に手配してよく語っている(追放されたかと思われた寮長クリストッフェル・ヨーネルがのうのうと帰島していることの憎々しさ!)。

極寒の気候条件も多くの場面で印象的に演出されているが、その点で最も強力なシーンはやはり、じりじりと武装権力に追い詰められたベンヤミン・ヘールスタートロン・ニルセンが凍りついた海上を行くクライマックスだろう。希望と絶望が衝突して混濁した逃避行を「映画」は幾度となく描いており、またそれにふさわしいさまざまの場を案出してきたが、この「凍りついた海上」はひときわ胸を締めつける壮絶な光景だ。

舞台の限定された物語を扱う演出家が閉塞感の醸成に手一杯になりがちなところで、鯨の「喩え話」などを導入して映画の視野を広めたあたりは脚本家の仕事も優れている。

(評価:★4)

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