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[コメント] 赤い河(1948/米)

圧巻。素晴らしい作品だとは思います。思うのですが…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ホークス監督の初西部劇作品。親子(養父と養子の関係だが)の関係を主題とした西部劇の傑作で、1948年全米興行成績3位と言う記録を残している。

 責任感と養子に対する愛情故にガチガチの石頭になったウェイン扮するダンスンと、旅を続けるためには義父を切り捨てねばならないことを決断するクリフト演じるマシュー。この二人の対極的な立場がたいへん面白い。

 父であるダンスンは気むずかしい所もあるが、牛二頭からここまで農場を広げただけあって、非常にやり手であり、それに対する息子のマシューはそんな養父を愛しつつも、自分が一人前になるためにはどうするのかを模索し続ける。この旅はある種子離れ親離れを描く精神的な旅路と言っても良く、愛情を語ることが下手な男二人が、親子関係から仲間関係へと展開していく出来事を旅という形を通して描いている。特に西部劇史上に残る名シーンと言われる最後の殴り合いのシーンは圧倒される。緊張感と、開放感。そして最後にほっとする瞬間、見事と言って良い。“どこかにわだかまりのある親子”→“敵同士”→“対等のパートナー”となる過程が実に上手く描かれていた。

 頑固親父役のウェインはこの人しかいないと言うくらい見事なはまり具合だが、これが映画デビューと言うクリフトが良い。“一体何が一番重要なのか”と言う本質を捉えているのはマシューの方で、これを演じきったクリフトは上手い。西部の男としてはやや神経質なタイプだと思っていたのだが、それを逆手にとって冷静さというものをよく表していて、繊細な精神をうちに秘めながらもマッチョという骨太な西部の男を見事に演じきっていた。クリフトと言えば『陽のあたる場所』(1951)とか『地上より永遠に』(1953)での演技が評価されることが多いけど、私は本作こそが彼の代表作だと思っている。

 牛の大移動とそれをコントロールするスタッフや、それをしっかりカメラに収めたホークス監督の技量も大したもの。広がる西部一杯にあれだけの数の牛が移動し、それを率いる牧童達の行動。これぞスペクタクルだ。

 しかし、私には受け入れられない部分が本作にはあって、それでどうしても点数を落としてしまう。

 いくら何でもここまで人間の命を軽く見るか?この映画を通して結構な人間が死んでるけど、その大部分ってダンスンに撃ち殺されてるだろ?それが西部の厳しさって言うのなら、何故息子だけは除外する?親子の愛情を確認するためだけに一体何人殺せば良かったんだ?そんな風に思ってしまい、最後の屈託ない笑いが、どうしてもやりきれない気分にさせてくれた。自分の使用人だったら、いくら殺しても法に問われることはない…なんてはずはないし。

 確かに素晴らしい作品とは思うからこそ、そう言うのに引きずられたくなかったな。

(評価:★3)

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