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[コメント] 死の追跡(1973/米)

サミュエル・フラーは原案(Story)のクレジットのみ残っているが、元々はフラーの監督作として撮影に入ったが中断し、監督を換えて完成した作品のようだ。クレジットバックおよび冒頭数分(4分強)は、絵画風に処理した静止画を繋ぐ。
ゑぎ

 最初のカットで町の紹介。牛囲い。町の建物。保安官のリチャード・ハリスが、子供に投げ縄を教えている。子供、ハリス、その後景に学校の窓からハリスの妻、という縦構図の画面。静止画は、銀行で、ロッド・テイラーが銀行員の額を撃つカットまで。

 まずは、テイラーの悪役ぶりが見どころだ。銀行強盗後のシーンで、ハリスの奥さんを撃ち、子供は馬で踏み殺す。また、この冒頭シーンしか出てこないが、テイラーの仲間でスクールボーイという役名のウィリアム・スミスも強烈。ちょっと普通じゃない雰囲気がよく出ている。他の仲間では、ネヴィル・ブランドもいて、左腕が鉄道のレール、というこれも面白いキャラクターだ。

 主人公のリチャード・ハリスは、元々、銃を使わないで町をおさめるポリシーの保安官だったのだが、妻子を殺されたことでブチ切れ、狂乱の追跡劇となる。テイラーたちを追ってメキシコへ入った時点で、メキシコ側の保安官アル・レッティエリが登場。ハリスは狙撃を邪魔される。レッティエリは、本作では珍しく正義派で、テイラーたちを殺さず、裁判にかける、法を守ることにこだわる。普段、善人を演じるテイラーを凶悪な人物に、逆に『ゲッタウェイ』や『マジェスティック』の悪役であるレッティエリを正義の保安官に仕立てている点は、本作の面白い点だろう。また、追跡シーンは山谷、崖を利用した高低のある画面が多く、このあたりは見応えがある。

 しかし、全体にズーミングを使いまくる。こゝまで使うと、私は気になってしょうがない。なかなか魅力的な西部劇だが、もうちょっと落ち着きのある画面であれば、良かったのにと残念に思う。

(評価:★3)

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