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[コメント] ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略(2012/日)

ギャグを排した深刻な「ベルセルク」に感じる不安
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作は骨太な暗黒伝奇ロマンでありつつも、時折気の抜けるしょうもないギャグも平気で挟みこんでくる。「蝕」で無惨の極みを描ききり、膨大な怨念を抱えたガッツの地獄巡りを現在も描き続けている原作だが、無惨の対極にあるしょうもないギャグも忘れていない。そしてこれは、原作「ベルセルク」を考える上で非常に重要なところだと思うのだ。

ギャグの大半を担う妖精パックに代表される善良さや呑気さは、どこかで血みどろのガッツを救い、作者の三浦建太郎をも救っていると思われる。ま、「蝕」なんか何年も描き続けたら漫画家は体壊して死にますからね。三浦建太郎は、「ベルセルク」の世界を暗黒のみで構成しようとはしていない。よきものも悪しきものも、等しく存在する世界を描こうとしている。あのー、原作に髑髏のおじさんがいるでしょう。あのギャグひとつ言わないシリアスぶった髑髏おじさんでは、邪悪と対等には戦えても、勝てはしないのです。彼にはパックがいないし、仲間もいないし、ギャグもない。だからガッツは髑髏センパイとは違った道筋で、しょうもないギャグもありの「人間」のまま、いつかグリフィスに到達するのだろうと思う。何十年かかるかは知りません。

この劇場アニメ「ベルセルク」は素晴らしい出来栄えなんだけど、骨太伝奇ロマンたらんとするあまりに「しょうもないギャグ」をほぼカットした、非常に深刻で真面目な「ベルセルク」になってるなあと思う。ゆえに自分は、どこか不安になるのですね。「ベルセルク」の暗黒、残酷、悲劇的な面を見事に映像化してはいるんだけど、それだけではないんだという気持ちもあるのです。だってこのアニメには、落書き風の二頭身パックとか登場する余地がないもんなあ。このシリアス顔しかしないガッツでは、「蝕」以降のグリフィスに辿りつけない気がするのです。

次回はついに「蝕」が描かれる。これはもう、本当にひどい目に遭わされることを覚悟せねばならない。しかしその前に、ワイアルドおじさんの追撃と死闘がある筈だ。あのギャグと魅力と忌むべき恐怖が渾然一体となった不可思議なキャラクターをどう描いてくれるのか、ちょっと楽しみではある。ただ今作のアドンの扱いを考えると、あんまり期待できない気もするのですが。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)DSCH 赤い戦車

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