[コメント] ブラック・ブレッド(2010/スペイン=仏)
それまで信じていた事が崩れていき、新しい事実に直面していく、その過程としての少年の成長を描いたようにも見える。これって相当よくできた脚本ではないだろうか。
最初、観客は子どものように何も知らないまま物語が始まり、事件が起き、大人たちは子どもには本当のことを話そうとはしない。そして旺盛な好奇心に満ちた子どもはそんな大人の世界を盗み見るようにして垣間見ていく。
やがて子どもにはとうてい受け入れがたい出来事が明らかになる中で大人になっていく。それはしかし、成長というよりはむしろ変貌というものにも思えた。
それだけに学校で母親を見送るシーンには様々な、複雑な感情がこみ上げてくる。観客もまた、何も知らなかった無邪気な子どもから、両親が何をして、自分のためにどうしたのか、何故そうしたのか、を知った大人になったことへの戸惑いと、怒り、情愛、あきらめ、決意などなど、多くの気持ちが揺れ動く。
まさに観客の心を揺り動かす映画といってよいのではないだろうか。
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