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[コメント] 苦役列車(2012/日)

動物ごっこのような相変わらずワザとはずしたシーンを持ってきたりもするが、本作は随分と安定的な、分りやすい演出だ。堂々とした、と云ってもいい。例えば、最も気合の入った場面は何と云っても居酒屋のシーンで貫多(森山未來)の「田舎者は本当に、ムヤミと世田谷に住みたがるよな。」という科白から始まる部分だと思うが、
ゑぎ

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 この部分の前に壁の時計を使った時間経過の表現がある。このようなお膳立ての演出が上手く決まっているのだ。他にも、本作のプロットを転がすテコの役割をになっているキャラクターは康子(前田敦子)と高橋(マキタスポーツ)だが、康子のシーンは当然としても、実は高橋の出番も気合の入った撮影が横溢している。高橋が貝を捨てさせられた後の昼休憩のシーン。貫多と正二(高良健吾)のところへ談笑に行った高橋が貫多に馬鹿にされる場面のこの3人のフルショットが全編の中で最もフォトジェニックなカットだと私は思う。このような良いカットを与えられたキャラクターがプロット上も重要に扱われていく、というようなベクトルでの整合が演出の安定感の一因だ。開巻とエピローグ(3年後)で同じように繰り返される、のぞき部屋前の円環処理や3人で海に入るシーンのリフレイン、『マルコヴィッチの穴』みたいな若干苦し紛れのようなエンディングも含めて、随分と落ち着きのいい映画になってしまっており、商業映画としての出来栄えは見事なものだと思いながらも、鼻白む感覚も持つ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)jollyjoker[*] ナム太郎 林田乃丞[*] 太陽と戦慄[*] 緑雨[*] 3819695[*]

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