[コメント] 苦役列車(2012/日)
理想的な二人の共同作業と期待したが残念な出来。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作は日下部に対する貫多の態度を真逆にして、原作者から批判を受けた。映画を原作と比較するのはしばしば不毛だけれど、本作は私も批判されて当然と思う。日下部が郵便局に就職したのを嘲る毒々しい原作と比べれば、日下部と康子を(怨念を込めるならともかく)美しく想起しながら原稿用紙に向かう本作の生温さは、全くもって飽足りない。この、PTAに阿ったような結末は何なのか。慎ましさを嗤い、飽足りなさに雁字搦めになった破滅型の人物を彫琢するのでなければ、西村賢太の名を原作者として冠する意味がない。
『どんてん生活』『ばかのハコ舟』の冴えが見られないのは、メジャーで撮っているせいなのかと心配になる。海辺の情景など生半可な希望を表出していかにも侘しく、同じ海辺でも『リアリズムの宿』では侘しさがナンセンスに昇華されていたものだったのに、山下のあの麗しい資質はどこへ消えたのだろうと残念でならない。
本作が原作を超えた唯一の美点は、サブカル・ニューアカを罵る件で中沢新一・四方田犬彦と実名を挙げたこと。これには爆笑させられた。なんで全編その調子でできないのか。
なお、日下部は「小銭をかぞえる」に山志名という名で既出のキャラで、ここでは既に子持ちの郵便局員、語り手は借金を頼み断られ、悪態をついて絶縁する。
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