[コメント] 桐島、部活やめるってよ(2012/日)
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憤る者、苛立つ者、黙る者、泣く者、興奮する者、静観する者、堪える者…。 桐島が部活をやめると知った彼らはそれぞれの立場からそれぞれの心を揺るがせ、右往左往する。 彼らにとって桐島とは何だったか。
才能があり、運に恵まれ、頭も良く、運動神経も抜群で、容姿端麗。 世間では無限の可能性が溢れる若者として扱われる"高校生"だけれど、 実は既に自らの前に広がる世界には限界があることを知り、人生の翳りに不安を抱き、少しずつ何かを諦めつつ過ごしている。 そんな中で何ひとつ翳りの無い、眩しいほどに万能な人物が桐島。 憧れ、希望を託し、信じられる、唯一の光。
放課後にバスケをする帰宅部のクラスメートらは当然のように頑張ることを諦めている。 誰も見ていない場所で素振りの練習を続ける野球部の先輩も、実は自己満足・自己陶酔のために頑張っているようなだけで心の底では諦めている。 クラスでは浮いているけれど独自の世界観を持ち、父親の8mmカメラで映画を撮る文化部のクラスメートも、実は自分の才能を悟っていて映画監督を目指して頑張っているわけではない。
夢を見たい。 もう少しだけ夢を見させてほしい。 ヒロキの心の叫びが聞こえるような気がする。 しかしそれが望める人物は桐島以外にも周囲には見当たらず、ただただ途方に暮れるしかないのだった。 教祖とも言うべき桐島を失った彼らは何を頼りに進んでいけばいいのか。
茫漠な可能性に死んだような気がする。 不安で不安で吐き気をもよおすほどの不安で死んだような気がする。 "死者たちの青春"は観る者を揺るがすパワーがあった。
映画としてもキャストから台詞から映像から構成からクライマックスへの流れからオチから全て、 何から何まで素晴らしかったと思う。(正確な表現ではないが、言い過ぎているとも思わない) 一人でも多くの人に観てほしい。 主題歌として流れる高橋優さんの「陽はまた昇る」がまた絶妙なんだよね!
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