[コメント] スター!(1968/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作が投入された1968年と言えば、映画界には激震が走った年でもある。前年投入された『俺たちに明日はない』(1967)から『イージー・ライダー』(1969)へと映る移行期であり、インディペンデント作品が世界的な大ヒットを飛ばし、同時に『猿の惑星』(1968)や『2001年宇宙の旅』(1968)と言ったSFに対する試みもあり、全く新しい形での映画作りのチャレンジがなされた年となっていた。
そんな中で投入された本作。
時期的に考えるならば、これは製作の側からしたら、まさしくこのような作品を作らせようとしたのは分かる。自分たちの理解できない映画がもてはやされている中で、「これぞ映画だ!」というものを作ってみようとしたのだろう。
実在のエンターテイナーをモデルに、世界中を旅させて、大々的なミュージカルシーンを使う。まさにハリウッド製大作映画だった。フォックスの首脳陣が作ろうとしていたのはまさしくこれだろうし、ワイズもそれに応えてくれてはいる。まさに満を持して投入された大作感溢れる作品となった。
ただ、それでこの作品が面白いか?と言われると、首を傾げざるを得ない。私はワイズ監督作品のほとんどは大好きなんだが、本作だけは全然心動かされない。一流の役者と大好きな監督が組んだ大作が、何故こんなに面白く感じないのか、かえってそれが不思議なくらい。
その理由は?と考えると、ワイズ監督はこれまでにもいくつかのミュージカル映画を作ってきた。それこそ『ウエスト・サイド物語』であれ『サウンド・オブ・ミュージック』であれ、まさしく映画史に残る作品ばかり。これらの作品のすばらしさは映画の手堅い作りや物語ではない。それらを前提にした上で、それぞれに監督が叩きつけた挑戦によって名作となり得たのだ。そのチャレンジスピリットこそがワイズ監督の醍醐味だった。
ところが本作にはそのチャレンジが感じられない。大作予算を使って大作風の作品を作っただけと言った感じ。アンドリュースを始めとする役者陣も良いし、演出も良い。だけどパッションがなく、どうにも古臭い。当時の批評家受けはしたかもしれないけど、今観てもたいした作品には思えない。仮にこれが1968年の作品でなく、50年代の作品だとしたら?それで面白くなるか?と考えると…やっぱり薄味としか言えないか。
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