[コメント] 鍵泥棒のメソッド(2012/日)
当然、香川から堺への演技指導のくだりを指して言うのだけれど、この映画はこのキャストありきで成立している部分が大きくて、監督自身も荒川良々の起用が作品のリアリティのラインになっているとどこかのインタビューで語っていたけれど、従来の内田作品よりもキャストの芝居に作品そのものの印象を大きく委ねている映画だと思う。つまりはあて書きに近い形で作られたものだろうし、この3人ならこれ、と決め打ちで作られていることが、今後の内田作品の方向性を指示しているように感じる。
つまりは、脚本主導でなく、演者主導の映画作りになっていくんじゃないかと、これは希望的観測も含めてそう思っていて、たとえば企画として、じゃあ哀川・竹内でなんか書こうよ、となればそれを書くし、蒼井優ちゃんと高良くんならこう書くし、あるいは『インファナル・アフェア』みたいなのって発注すればそう書くし、という風にリアリティの線をその作品のたびに引き直して撮れるというような、なんだかすごく内田けんじという監督の未来に無限の広がりが見えた作品だったと思うんです。その器用さが底知れないということを証明したような気がしたんです。
だから、もういいや、と思っちゃった。内田監督にはできるだけ長生きしてもらって、その時代の旬な役者さんや旬な設定を使って、3〜4年に1本くらい、あと15本くらい、私はリアルタイムでそのフィルモグラフィを追いかけられる幸せを感じながら、生きていこうと思いました。内田監督の新作が見られるなら、この世には生きていくだけの価値があると、もちろんそれだけじゃないけど、少なくとも内田作品はそういうのの一つだな、と、そういうふうに思った作品でしたよ。★4。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。