[コメント] アウトレイジ ビヨンド(2012/日)
タイトルの出方からして違うように、これは「暴力」そのものを描いた前作とは似ても似つかぬ代物だ。どちらかといえば、私はこちらの方がより面白いと思う。特に前半は近年の北野武作品でも最高だろう。クライマックスは深作欣二『仁義なき戦い』その他古いやくざ映画への決別宣言か。<レビュー全面改訂しました>
<2度目を観てレビューを全面改訂しました。投票してくださった方、ご了承ください。>
冒頭第1ショットは、これまでの北野武映画の象徴ともいえる「海」から始まる。 そして、そこから幽霊のように浮上してくる、不気味な黒光りを湛えた車。まるで大友の帰還を表しているかのようだ。
そう、本作の大友はその通りまるで幽霊のように不死身で、亡霊のように神出鬼没なのだ。銃で撃たれても平然と相手を殴り飛ばして退散させ、自主的に行動することなく、ただ自分を必要としてくれる中野英雄にはついていき、どこからともなくふらっとフレーム内に出現する。いつの間にか三浦友和の隣席に座っていることの恐怖。その足取りの軽さは、とても狙われている人間のそれとは思えない。
また食事の場面もよく出てくるが、この大友は料理に手をつけている描写が全く存在しない。それは小日向に誘われた料亭でも、韓国フィクサーのところでも一緒だ。一体生きた人間が食事しないなんてことがあり得るのだろうか?
ラスト・シークエンスで葬儀場へと続く青みがかった坂道を上る北野武。その姿は冥界からやってきた死神を思わせる。「アウトレイジ ビヨンド」という題名が示す通り、本作は前作で死んだはずの男が「彼岸」から召還されてくる物語だったのではないか。
だからこそ、自らを召還しようとした罰当たり者に鉄槌を下すラストは正当なものとして受け入れられる。一瞬のラストカットから暗転でエンドクレジットに入るその唐突さ。一切の感情を断ち切られるあの簡潔な終わり方は、最早ブレッソンの領域にも迫っている。
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