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[コメント] 劇場版TIGER&BUNNY -The Beginning-(2012/日)

言ってみれば刑事ものと同じ構造のバディムービーであり、それを日本的情緒とSFで彩ったベタドラマながらも、腐女子のみなさんだけに捧げ渡してしまうのは勿体なくはないか。ここ数年の『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』に較べれば、これは随分オトナの男性客がそそられる内容であり、同時にアニメとしての必然性も充分備えている。
水那岐

俺はだいたい映画オタクを自認しているから、他人事のように「オタク」を「キモオタ」とか「萌え豚」とか分類して悦に入っている映画ファンは、よっぽど自分の正体に気がつかないお馬鹿さんどもなのだなぁ、と思っているのだが、こと「腐女子」のみなさんについてはよく理解できないことを恥じてもいる。

さて自分のこれを観た劇場でも、ほぼ全体に群れる観客の98%はそんな皆さんゆえにびっくりした。それは『タイバニ』の支持層のウワサをよく聞いておかなかったためでもあり、そして終劇後にAKBまがいの人気投票フィルムが流れたためでもある。まぁ、しかしオタクの謎は男女を問わないし、『まどマギ』や『けいおん!』のかかった劇場では、たぶん女子には驚異を呼ぶ男たちの空気が存在するのだろうから、そんなものだろう。

まあ、そんなわけで客層のありようなど自分はどうでもいいのだが、これは女性専用アニメだ、と納得しているらしい男性に対しては、そんなことを国会で青島幸男が決めたのか、と問い詰めたくもなる。べつにハードゲイ合戦フィルムじゃなく(そういうのは薄い本で例のみなさんが執筆するものだ)人情凸凹コンビ喜劇じゃないか、これ。男が観ても理解できない作品では全然ない。自分的には凡百の萌えアニメより遙かに楽しかった…のは、たとえBLへの滑走路にしろキャラクターの方向付けがきちんとなされているからだ。そしてそれにより役を演じるキャラクターの書き分けが充分だからだ。それはアニメの必要条件だろう。

いい加減、動きの演出だけがみごとなジブリアニメなどに幻想を抱くのはやめにしているのだが、かといって女の子が麻雀で勝ち進む過程などをアニメで描くのは理解できないのは確かだ。この作品では実写だけでは描写できない舞台を描くためのみならず、極端なボディランゲージをはじめ演出上の動作は確実にアニメとして描写されるべきものだ。そういう部分は評価したい。

ジャパニメーションなんてことばが、イカニモな思想を伴って独り歩きしていた不幸な時代があったが、その頃に較べればアニメはずっと肩の力をぬいて創られているように思われる。少年ジャンプ系のベストセラー漫画などに伍するカタチで、こういう「名作」ではない快作が世界に流布するのは歓迎したい。

(評価:★4)

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