[コメント] のぼうの城(2011/日)
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原作未読です。
起こっている事柄だけを考えれば、相当面白い話であることは良くわかる。しかしながら、その魅力が十分に伝わっているとは言い難い。
その一番の原因は長親のいわゆるカリスマ性を前提としてしまっているため、領民にしても部下にしても「のぼうのために一肌脱いでやるかい!」となるのが、観客にしてみれば根拠薄弱でついていけなくなってしまっていることであろうと思う。
その最たるシーンがいざ戦となって領民に城に入るよう正木利英(佐藤浩市)が通達に来るシーン。この戦を決めたのが長親であると告げた途端に領民は大笑いしているがそれを冗談と取るわけでなくそれをあっさり信用する。これは本作のストーリーラインからすれば考えづらい。田植えすらまともに出来ない領主が「天下の兵」を相手に戦うといわれて「しょうがねぇなぁ」となる根拠はカリスマ性だったり人格だったりするというのは理解する。しかし、本作ではそのカリスマ性の担保が観客に対してろくになされていないので、このシーンのリアリティがほとんどないように見えてしまう。
この対処はそんなに難しいものではなく、ほぼ柴崎和泉守(山口智充)の台詞一発で説明している甲斐姫(榮倉奈々)の手打ちエピソードをアバンタイトルから本編の序盤で深く描いて領民・部下が「やるときはやる」と一目置く流れを作れば良いだけの話。代わりに備中高松城攻めなど冒頭の豊臣方のエピソードを台詞一発にすれば問題ない。
実際問題、この話に石田三成(上地雄輔)や大谷吉継(山田孝之)を多く登場させる必要性はないはずで、もう少しやりようがあったのではないかと思う。
意気込みと金をかけたということは重々承知したし、最後の開城交渉の部分など見所がないわけではないので惜しいとは思うが、多少その分に下駄を履かせてもこの評価である。
(2012.11.7 シネプラザサントムーン)
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