[コメント] 希望の国(2012/日=英=香港)
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至極簡単な話だ。
あなたは、家族を亡くし、放射能に怯えながら未だ家にも帰れず、殺処分をも受け入れ、それでも一歩一歩進んでいる人たちとともに、この映画を観ることができるのか。
原発被害者の憤りは「愛があるから大丈夫」なんて薄ぺらな言葉を並べ、死んでみせる程度で昇華させられるものなんだろうか。結局、逃げてみせることだけで、最後に『希望の国』なんてタイトルを見せるアイロニーが、格好がいいとでも思っているんだろうか。
その一番単純な部分を推し量ることなく、自身の義憤のみで作品を作り、世に問おうとする姿勢はプロのものとはいえまい。百歩譲って今、風化する前に公開を急いだとしても、伝え方、表現の仕方は他にいくらでもあるのだ。
webdice.jp/dice/detail/3675/(wwwヌケ)に「世界中のどこでも、人間は、個人の視点で目の前のことを捉えますからね」というプロデューサーのインタービュー記事がある。その通り。これは監督個人の視点でしかない。
タブーを冒しても伝えなければいけない真実はあるが、刃片手に詰め寄らなくては伝えられないというのであれば、それは作り手の怠慢である、と私は思う。タブーを冒すには勇気が必要だが、それは手段であって目的ではない。結局、園子温の表現手法はそれ自身が目的化したマスターベーションなのだと、図らずも暴露しているとも言える。
残念ながら、もし誰かがそれを「良し」とするならば、それはそれで受け入れざるを得ないだろう。 だが、私「個人の視点」では受け入れることはできない。
個々人の演技は良かっただけに、尚のこと残念さが残る映画だった。 あーハラが立つ。
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