[コメント] 希望の国(2012/日=英=香港)
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私は、文学者・石原千秋が言った「優れた作家は本当に描きたいことを隠す」という言葉を信じている。だって「この話はこういう教訓を含んでいるんですよ。めでたしめでたし」なんて自ら語る昔話なんてないでしょう? しかしこの映画は「この国は一歩一歩やり直すんだ」とあからさまに言います。んー、言ってることは分かるんだけどねえ・・・。 園子温は、表現したいことが明確にあって作品を作る作家だと思う。だから、あの災害を前にして何か言いたくなったのは仕方がないとも思う。
園子温はこの映画で、あの災害を映像に残そうとした。 ならドキュメンタリーの方がよかったんじゃないかとも思うのだが、たぶん園子温が映像に残したかったのは「人々の気持ち」だったんじゃなかろうか、と私は思っている。 草木が大地に根付くように土地に根を下ろした住民が、断腸の思いでその地を離れる。そんな気持ちを作品(映像)に収めて、後世に残そうとしたのではないだろうか。
しかし私は、別な意味で「映像に残すこと」の意義を考えていた。 大谷直子だ。 フィルムに焼き付けられた『肉弾』のピチピチの大谷直子を見ている。 『ツィゴイネルワイゼン』の妖艶な大谷直子を知っている。 そしてこの映画では老婆役。 何かこう、非常に感慨深いものがある。 この映画の本筋と関係ないけどね。
関係ないついでに言うけど、夏八木勲がカッコ良すぎ。俺、大きくなったら夏八木勲になりたい。
(12.10.21 ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞)
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