[コメント] レ・ミゼラブル(2012/英)
演出の不行き届きを認めるのは容易い。人は安心してこの映画に批判を差し向けることができるだろう。曰く、映画的でないと。しかり、これは映画以前、先史時代より連なる感動だ。諸人の声が重なること、旋律が歌い継がれること。そこに生理的な感動がある―『レ・ミゼラブル』はその可能性に賭けている。
したがって私のベストを挙げるならば、月並みながら“One Day More”と“The People's Song”(およびリプライズ)になるだろう。とりわけ前者は各人各様の感情をバラバラのままに、しかし同時にひとつの統合として呈示している。そのような表現にとって、映画よりも混声合唱のほうが経済的な形式であることを否定するのは難しい。そしてさらに、その混声合唱を映画が利用できる以上、映画はその採用に躊躇する必要を持たない。同じく“One Day More”でのめまぐるしいクロスカッティング、あるいは独唱におけるアップカット偏重のシーン構成、はたまた思い出したかのように繰り出されるロングショットにしても、トム・フーパー演出のあけすけな思慮の浅薄は「映画的である/ない」というよりも「非-舞台的である」という点で一貫している。むろん私たちは、「映画」がそれすらも許容してしまうことを知っている。
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