[コメント] ジャンゴ 繋がれざる者(2012/米)
容赦なき暴力の遂行が生む快感。誤解を恐れずに書けば、正当な恨みに裏付けれた暴力は美しい。そんな、現代社会では封印されてしまった人間の本性を久しぶりに呼び覚ます快作。有無を言わさず、弱きを助け悪事を抹殺する暴力の具現は、映画に許された特権なのだ。
「言語」の壁が織り成すアヤが面白い。前作『イングロリアス・バスターズ』では侵略とユダヤ人弾圧の象徴として扱われていたドイツ語が、本作では奴隷制というアメリカの蛮行に外部からクサビを打ち込む理性の象徴(対称として哄笑されるデカプリオのフランスかぶれ!)として機能する。前作に続き、その行使者であるクリストフ・ヴァルツの妙。
文化の象徴として持ち込まれるこの「言語」のアヤは、人は「善き文化」と「悪しき文化」を平然と共存させる厄介な生き者であるという事実を浮き彫りにする。タランティーノは「善き文化」などには目を向けない。彼はいつも「悪しき文化」の具現である暴力によって、より巨大な「悪しき文化」としての制度を駆逐する映画を目指すエンターテイナーだ。その点において、本作はタランティーノのフィルモグラフィのなかでも、最上位の成果として位置づけたい。
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