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[コメント] ある兵士の賭け(1970/日)

日本にもベトナム戦争賛成派、米軍のプロパガンダ映画をわざわざ撮る親米派もいたという証左で、石原プロの立ち位置なんてそんなもの、保守層に一定の需要が見込まれたんだろう。コケたらしいけど。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







米軍人アレンとパーマの座間発別府行き二週間踏破旅行。6500ドルの賭け金は勝てば雨漏りのする別府の孤児院へ寄付。冒頭字幕によると実話ベースらしい。一日平均100キロ歩くのは人間の限界を超えているというナレ。途中、24時間マラソンみたくスキップされたらどう確認するのだろうという不安を残しつつ旅立ち。

ふたりが塒求めて火葬場へずけずけ入っていくと報道カメラマン裕次郎が登場して説教。「君は君の国を象徴している。君は平和を望むが、君の条件下での平和だ。君こそがアメリカだ」。彼は狂人かと思われたが、実はアレンに朝鮮戦争で出会っていたのだ。回想になり、朝鮮の集落での戦闘(藁屋根の円い民家が数軒、中央に井戸、火の見櫓や石積みのアーチがある)で民間人の男女を誤まって殺してしまい、幼い子供が泣き、まだ敵兵が潜んでいるかも知れないのに裕次郎はアレンをぶん殴る。

裕次郎はこれ公表したら養護施設の子はどう思うかなどと脅迫。これは明らかに事故であり、裕次郎はもちろんやり過ぎなのだが、当時の米軍は悪者だという風潮を反映し、これを間違った先入観だと改めさせる意図に満ちている。裕次郎は無理解な若者として登場し、「米軍の心を理解する」というプロパガンダを予定通り理解する道化の役回り、というたわけた物語な訳だ。

アレンは朝鮮戦争後、別府に空母入港、奉仕隊組んで孤児院のペンキ塗り。施設は雨漏りがして補修が望まれていた。アレンはインディアンの孤児、などと明かされる。行程は、相棒のフランク・シナトラJr.が長岡京のサントリービール工場でミュージカルのようにシナトラのように唄ったり、倒れた彼をよほどの暇人らしい浅丘ルリ子がクルマで拾って看病したり、人間の限界を超えた行程なのに錦帯橋なんぞ渡ったり、火事みつけて消火活動したり、スポンサーなのだろう出光の徳山工場を歩いたり出光のガソリンスタンドで電話借りたり。怪我しても踏破という泣かせがあり、白バイ先導で賑々しく到着、孤児院園長のアラタマに愛の告白をすると面白かったのだが、サマンサみたいな嫁はんが到着したのでそういうサプライズもなく、朝鮮の被害者の子が迎える訳でもなく。

しかも掛け金は施設改修の頭金にしかならず、施設取り壊しの画だけが映される。アレンはその後二度募金旅行しているのだが、その間孤児たちはどこで暮らしたのだろう。実話ベースらしいが、最後まで施設の改修完成は描写されないからそのままだったのだろうか。もうそうなら酷い話である。世界のミフネが新聞の偉いさんで登場するが、この新聞社も何もしないらしい。思いつきのボランティアってこんなもの、米軍らしいという感想が惹起される。

アレンはその後、すでに悪評高かっただろうベトナム戦争に再び参戦。大きくなった韓国孤児と共同作戦、ぐらいの展開を予想したがなんとあの子は最後まで顧みられることもなく、アレンは日本行きを夢見ながら、やたらミニマムな戦闘描写で射殺される。裕次郎は彼の心を理解しようと募金旅行に出かけるという間抜けな収束。朝鮮戦争で韓国兵は日本語を喋り、田舎の施設長アラタマは流暢な英語を披露するという言語帝国主義も徹底されている。

(評価:★2)

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