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[コメント] 藁の楯(2013/日)

新幹線大爆破』や『太陽を盗んだ男』などの70年代(底抜け)大作邦画を彷彿とさせる「べらぼう感」がたまらない。めっちゃ楽しかった。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
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春夏秋冬いろんなジャンルを撮りこなす三池崇史。 私は彼にもう一つ称号を与えたい。 「いま日本で一番“べらぼう”な映画が撮れる監督」。 いつも言ってるけど、とにかく巧いんだ。集団の捌き方なんか秀逸。 そして常に攻めている。「そつなく」「無難」といった姿勢はそこにはない。

護送車のシーンがあるでしょ。「パトカーいっぱいだぁ」と思う体感時間を超えて、さらにパトカーの集団を映し続ける。「オイオイ、そんなにいるのかよw」と愉快になってくる。人間、度が過ぎると可笑しくなってくるんだ。おそらく三池崇史は意図している。 そう、この映画は、その設定自体からバカバカしい「べらぼう」な話なのだ。

このべらぼうな大作感は、70年代邦画大作を彷彿とさせる。 『日本沈没』はもちろん、『新幹線大爆破』や『太陽を盗んだ男』、『動脈列島』や『東京湾炎上』といった類の映画だ。ん?『東京湾炎上』?底抜けにもほどがあるな。

この当時、どうしてこういう大作がヒットしたのか、一つの研究に値すると思う。ま、面倒だから研究しないけどね。 おそらく「テレビへの対抗策」「ハリウッドパニック映画ブームに便乗」ということが挙げられると思うけど、それは制作の理由であって、必ずしもヒット(大衆のニーズ)の理由じゃないよね。 私が勝手に思うに、「劇的に変化する社会に対する潜在的な不安」という大衆の(無意識の)ニーズにマッチしたんじゃないだろうか。 右肩上がりに成長して、いろいろ便利で安全な世の中になってるけど、ちょっとしたことから危機に陥るかもしれない。そんな無意識の不安感。実際、80年代にオイル・ショックというパニック状態に陥るわけだし。 そういう意味では、これらの大作パニック映画は『モダン・タイムズ』の系譜なのかもしれない(そうか?)

では、この21世紀に作られた『藁の楯』は何かと言うと、私は「ゲーム」なんじゃないかと思う。設定のための設定映画。『インシテミル』とか『カイジ』とか『ライアーゲーム』とかの流れ。あ、3分の2が藤原竜也だ。 監督によっては強いメッセージ性を持った映画にも成り得る話かもしれないけど、この映画にそういう意図はない。 だって、春夏秋冬いろんなジャンルを撮りこなす三池崇史のポリシーは、観客の度肝を抜くことだもん。たぶん。 役者も良かったよ、高橋和也とか。

余談

藤原竜也ファンのウチのヨメは「いままでロクな作品がなかったけど、初めて代表作と呼べる作品だ」と満足していたよ。

(13.05.12 ユナイテッド・シネマとしまえんにて鑑賞)

(評価:★5)

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