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[コメント] 風立ちぬ(2013/日)

映像として表現したいことを存分に表現して、言いたいことを最後に付け足した、と。
カルヤ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







宮崎駿に大人の恋愛が描けるとは思っていない。大人の心情を描けるとも思っていない。正直、内容に全然期待はしていなかった。

実際作品を見てみると、やっぱりというか何というか、普段通りの素晴らしい映像表現とは裏腹に、物語は随分淡々と進んでいく。宮崎駿がこの設定で大人を描くには、確かにこの方法しかないだろう(恋愛部分は相変わらず突拍子もないが、宮崎駿に乙女心は求めないことに決めたので諦めるとする)。

淡々とした進め方が悪いわけではないし、私も嫌いではないのだが、この作品にはどうにも乗り切れない。時代に翻弄される男女を描きたいのか、限られた時間で懸命に愛し合った男女を描きたいのか、その愛する妻との時間を削ってまでも自分の夢を追い続けた男を描きたいのか、よくわからないのだ。

そしてラストに唐突に放たれる「あなた、生きて」や「生きねば」等の台詞。ポスターにも「生きねば」とあるから、それが本作の言いたいことだというのは間違いないだろう。しかし私には、この主人公が「生きねば」という言葉を表現するにふさわしい人物には思えなかった。何があっても淡々と生きてきた主人公だから、妻や憧れの人にそう言われようが言われまいが、これからも淡々と、そして懸命に生きていくはずだから。

逆に言えば、だからこそ台詞にした上で宣伝文句にもする必要があったのだろう。物語として伝えられていないのだから。

映画として言いたいことを直接台詞にするこの方法というのは、正直相当ダサい。よって、私のこの映画の評価は「ダサい」である。

日本が世界に誇る巨匠の最後の作品がダサい・・・。何とも切ない気分で劇場を出た。

(評価:★2)

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