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[コメント] 風立ちぬ(2013/日)

「違う」映画。
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず、最初の感想は、思っていたのと「違う」映画でした。

ゼロ戦を作った男・堀越二郎の半生の物語ということでしたが、ゼロ戦を作る話かと思ったら、ぜんぜん「違う」映画でした。

「生きねば!」というコピー。混乱の時代の中で、なりふり構わず、なんとしてでも生き延びよう!と、「生」に対して一生懸命かと思ったら、「違う」映画でした。(この「生きねば!」は、「力を尽くして生きなさい」という言葉を言い換えたものだと鈴木氏が言っていた。似ているようで、まったく意味が「違う」と思うのですが)

予告編。大正から昭和へ、不景気・震災、そして日本はやがて戦争へ。「当時の若者」はそんな時代をどう生きたか・・・というコピーとはまるで「違う」映画。そもそも「若者」は、二郎、菜穂子、本庄、妹の加代ぐらいしか登場しない。

宮崎流の「反戦映画だ」といわれていた。それとも「違う」印象の映画。

大人のラブストーリーとも「違う」。

実在の人物・堀越二郎の物語と、堀辰雄の小説「風立ちぬ」の内容を合わせた作品だということだが、それでいてタイトルが『風立ちぬ』なのは、何か「違う」とも思う。

そういういろんな「先入観」とは「違う」映画だと思った。

では、映画として面白いか?そこは実に微妙だ。おそらく、「ジブリ」の冠のついた映画ということで、話題性は十分。多くの観客がその映像を目にするだろう。それも幅広い年代の老若男女が。はたしてどう目に映るんだろうか、この映画は。

映像の美しさは100点で文句はないと思います。本当にスクリーンから「風」が吹いてくるようでした。そういう意味では『風立ちぬ』のタイトルは至極妥当なのでしょうか?

私には「堀越」の部分と、「風立ちぬ」の部分がうまく融合していたとは思えなかった。それこそ飛行機を設計することに「生きた」堀越が、その同じ情熱を菜穂子にそそいでいたか?そう感じることができなかった。

これは「脚本」のせいか?「声」のせいか?劇中の堀越二郎から、「喜怒哀楽」の「怒」と「哀」はもちろん、「喜」や「楽」もあまり伝わらない。「感情の起伏」をおもてに出さない。ただの「いい人」の域を出ていない。だから、映画を見ていて、二郎の向こうに「庵野」が見えてしまうんだ。

この映画を通して、「戦争」をどう描きたかったんだろう?劇中に「軍人」が時折出てくるが、どれもみな「愚鈍」に映る。宮崎監督が何を描きたかったのか?

実は10年ぐらい前に見た、チェコの映画『ダーク・ブルー』という作品があります。第二次世界大戦中のパイロット2人と、彼らが愛した女性の物語。結構いい話で、特に「犬」がとてもいい演技!をしていて、「宮崎駿絶賛!」と宣伝されていました。 「いい映画をみた!」と思い、映画パンフを買ったら、その中に「宮崎監督×鈴木P」の対談があり、それを読んで「憤慨」したのを思い出しました。 宮崎監督いわく、『パールハーバー』『プライベートライアン』などの代表的な戦争映画を「クソ映画」と言っていたところまでは、まぁ納得できるんですが、なぜか『ロード・オブ・ザ・リング』をボロクソいっていて、いや、ちょっと待って、ジャンル全然「違う」じゃん、あれは戦争映画じゃないでしょ?と、あと、そのこき下ろした理由にも私はムカついたので、『ダーク・ブルー』が一気に嫌いになりかけた思い出があります。 ちなみにこの映画はジブリが協賛してましたが・・・。

だれかが、「ナウシカ」をみて、「あれは、まったく戦争映画として最低だ!」とかいったとしたら、彼はどう思うんだろう?とにかく、私は宮崎監督の「戦争観」がよく理解できません。

だいぶ、話が脱線しましたが、そういう見方は、この映画の趣旨とは「違う」んだろうなぁ、とも思う。 もうちょと「白紙」の気持ちで、この映画を受け入れてみたら、楽しいんじゃないか? 近いうちにもう一度だけ、この映画を見てみようとも思う。

あ、ジブリ史上初の、「名古屋」が舞台の作品。愛知県民にとって、それだけでもちょと「うれしい」。

追記:『ひこうき雲』は、「魔女宅」のブルーレイ発売かなんかのイベントで、ユーミンと鈴木Pが対談することになり、事前に鈴木Pがユーミンのアルバムを聞いたら(おそらくは去年発売のベスト版)、ラスト近くにあったこの曲を聴いて、この作品にぴったりだと思い、対談の席でいきなりオファーをした、とラジオ番組で語っていました。この曲自体には、モデルとなる少年がいるらしく、ユーミンとその病に伏せる少年との交流で生まれた歌らしいです。 ストーリーはもちろん、「映像」が実にイメージしやすい歌なんだと、再認識。最近、そういう歌って少ないんだ。

(評価:★3)

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