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[コメント] 日本の夜と霧(1960/日)

ライブ感覚を重要視した結果、とんでもなく早撮りしたのは分かります。だけどもっとゆっくり作るべきだったとも思います。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 新安保闘争の闘志達はみんな自分たちが正義であることを信じ、一致団結して戦っていた。だが、彼らの主張する“正義”とは、いつの間にか仲間の中にも犠牲を出していく。ここで運動が成功したら、その事は忘れ去られるか、あるいは殉教者として祀り上げられることになっただろう。だが、実際には運動は失敗。新安保条約は締結されてしまった。

 ここでのスピーチの数々は、この時代を振り返っている。正義感溢れる若者達の団結の尊さが最初の内は語られていくのだが、時代が下るに従い、話はどんどん暗く、シャレにならない方向性へと向かう。ついには、違う主張を許さず、内ゲバによる犠牲者が出たという事実に至り、一体これまで自分たちがやってきたことは何だったのだ?という重い命題を突きつけてくる。

 その意味では、本作はライブ感覚に溢れた弾劾作品であると言って良い。この視点こそが初期の大島監督の特徴であり、それが彼を「大監督」と言わしめる実力を示している。

 …で、その部分は確かに素晴らしいと思うのだ。が、一本の映画として本作を観る限り、はっきり言ってしまえば「とてもつまらない」のがなんとも寂しいところ。

 一つにはライブ感覚を重要視したためか、あるいはフィルムを惜しんだか、役者にそのまま台詞を喋らせてしまったため、特に後半になるとしゃべりが一本調子になり、しかも棒読みに近い台詞になってしまう。これを“迫力”と言う人もいるけど、聞き取りにくいだけでかえってリアリティから遠ざかってるようにしか思えない。むしろ素人演劇を、しかも台詞だけの怒鳴りあいを延々見せられてる気分になってしまう。

 それに大部分が会話で終始するため、映画としての盛り上がりそのものに欠ける。後半になるとエキセントリックに叫ぶ人間ばかり。結局話は一本調子のまま終了。最後は「愛」で終わるけど、それもなんとなくとってつけた。って感じ。

(評価:★3)

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