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[コメント] 飼育(1961/日)

美点は腰の据わった撮影だろう。『日本の夜と霧』再びの超絶長回しが古典的構図に嵌め込まれ、二度嘔吐する上原京子が印象に残る。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ただその内容は田舎の封建的な事なかれ主義というだけで、邦画で50年代に何度も試みられた切り口の縮小再生産でしかなく、テーゼ映画として観ても平凡で刺戟がない。三國連太郎の経歴だけ見ても既に『異母兄弟』や『荷車の歌』などの傑作があり、これらに比べれば地味過ぎる。捕虜ヒュー・ハードの真摯な眼差しが神目線で機能しているとは云えるのだろうが、それ以上の何かがない。

大江健三郎の「飼育」は、通常の倫理観が剥奪した先にある肉と肉の接触(云わばエロス関係)を描いた傑作であり(私は是枝の『誰も知らない』に近い感触を感じる)、後年のオーシマが目指したものと近似するのだが、ここでは不思議とこの主題を放棄しており、結果、何が『飼育』なのか全然不明の代物に変貌している。大江が嫌ったのも当然だろう。大宝のタイトルが貴重。

(評価:★3)

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